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漂泊の木かげ

 観光地の池には、よく白鳥ペダルボートが浮かんでいる。見ると必ず乗りたくなるが、あまり乗ったことはない。あれは女の子とデートするときに乗るものだから、もてない僕にはめったにそんなチャンスはなかった。

 だが一度、ひとりで白鳥ボートを借りてみたことがある。目を三角にして必死にペダルを踏み、ゼイゼイ息を切らせ、全速力で池じゅうを走り回って、爽快な汗を流した。だが桟橋に降り立ち、ぷかぷか揺れるボートを振り返ったとたん、いいしれぬ虚脱感におそわれた。あのマヌケな白鳥のデザインには、熱血ボートマンの闘志さえもそぐ魔力がある。
 白鳥ボートに汗くさいジャージを着たスポーツマンは似合わない。どちらかといえば、古くさいペアルックを着たアベックのほうが似合う乗り物だ。

2006.08.05

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