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流氷岬

 南極観測隊の業績を展示する博物館の体験コーナーで、零下25度の低温体験をしたことがある。
 分厚い防寒服を着て冷蔵庫みたいな部屋に入ると、ブザーが鳴って人工ブリザードが吹きつけてくる。たちまち歯の根が合わなくなり、身体がガタガタ震えはじめる。寒いというより痛い。想像を絶する低温だ。

 それまでは、いつか南極旅行に行ってみたいと憧れていたが、わずか数分の体験で、すっかり行く気を失った。大金を払って死ぬ気で観光するよりは、暖房のきいた部屋で氷山の写真集でも眺めているほうがよっぽどいいと知ったからだ。
 この博物館の南極体験コーナーは、南極への憧れを膨らませるためではなく、むしろ打ち砕くためにあるのかもしれない。

2008.01.31

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