萩原朔太郎の詩『遺伝』には「のおあある とおあある やわあ」と鳴く動物が出てくる。萩原の詩集に『青猫』があるせいで、てっきり猫の声だとばかり思っていたら、犬の遠吠えだった。
犬にしろ猫にしろ、夜中に鳴かれるとやかましい。僕のような凡人なら、うるさい獣は片端から撃ち殺してやりたくなるものだが、それを聴いて詩を書こうなんて考えるのだから文人はやはり偉いものだ。
夜中によく猫の声がする。発情期だからか、いやな大声で鳴く。音量だけなら改造バイクや酔っぱらいの学生のほうがうるさいが、猫のほうがよっぽど腹が立つ。獣の声が獣の心を呼び覚ますせいかもしれない。