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あかつきに咲く

 蓮は夏の早暁に咲く。開花のとき、ポンといい音がするともいうが、それはどこかの風流人がでっちあげた俗説らしく、まともな専門家で音がするなんて人はいない。おおかた池の魚がぱくぱくいう音でも聞き違えてるんじゃないかという話だ。
 蓮の音は、浮世離れした丸い花が人の心に生みだす無音の音なのだろう。僕みたいな俗物には、まず聞こえないと思うが、できれば一度くらい聞いてみたいものだ。

 蓮は泥の中に咲く。花の季節はまだ先だ。冷たい泥に沈んで遠い暁を待つ花もあれば、鳴りもしない音をいつまでも待つ人もいる。やっぱり蓮は現世の花ではない。

2006.03.26

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